藤本夕衣『古典を失った大学 近代性の危機と教養の行方』
藤本夕衣『古典を失った大学 近代性の危機と教養の行方』
大学教育は役に立つものでなくてはならないか
社会に余裕がなくなり、目に見えて「役に立つ」ことを切実に求められるようになってきた
短期的に役に立つもの
専門学校やシンクタンクとの違いが分からない
長期的に役に立つもの
社会との接点を示しにくい
役に立たない(とされてしまう)もの
研究者本人も趣味と認めるようなもの
その業界では価値が認められているが、専門外には理解できないもの
大学が社会にとってどのような存在であるべきか
古典を読むことの意義を教える場
ユニバーサル化とグローバル化
トロウのモデルによると大学進学率が15%=エリート段階、50%=マス段階、それ以上がユニバーサル段階
大学に通う人の数が増えて多様化し、様々なニーズに応えなければならなくなった
科学が役に立つことは、科学的には証明できない
哲学が科学を正当化する「大きな物語」を提示してきた
ポスト・モダンにおいて大きな物語は失墜した
古典を意義づける枠組みの喪失
ビルドゥング
普遍的な理性に重きをおく英仏流の啓蒙主義への反発
古典を読むのは個人の内面的な成長のためで、実用的な知識の習得ではない
ケーベルによって日本にも伝えられた
夏目漱石、西田幾多郎、和辻哲郎
ドイツにとっては自分たちの文化の個別の価値をみいだすためのものだったが、日本にとっては外来の文化であり、理念と矛盾する
リベラル・エデュケイション論
近代派
科学やテクノロジーは社会の発展を支える実用的な知識であり、古典は実用性に乏しい古い知識である
古典派
新しい科学やテクノロジーは無秩序を招くものであり、古典こそが、知性を完成へと導く
artes liberales
過去から伝えられてきた価値規範を重視する
イソクラテス、キケロ、中世キリスト教
liberal-free
伝統的な価値観を受け継ぐよりも、そこから解放されることをよしとする
ソクラテス、プラトン、スコラ哲学、啓蒙思想、科学
artes liberalesの力が弱まるにつれ、古典を学ぶ価値が失われた
liberarl-freeの理念に従って、古典を批判的思考力を育成する手段として見直す